2011年3月2日水曜日

ひな人形はどこへ消えた? ――日本の住宅事情とひなまつり



「あかりをつけましょ、ぼんぼりに~♪」3月3日はひなまつり、各地で絢爛豪華なひな人形が飾られ、女の子の健やかな成長と幸せが願われている。だが、現在の各家庭ではどれほど飾られているのだろうか。2008年にオリコンが行った調査によると、7割以上の女性が「今年は、飾らない予定」と答えている。

「出すのもしまうのも大変だし、場所を取るから」というのが主な理由に上がっているが、確かに核家族化や共働きがあたりまえとなった現在において、五段、六段もある絢爛豪華なひな人形は無用の長物となっているのかもしれない。だが、ひと昔前なら多くの家庭にあったひな人形は、いったいどこに消えたのだろうか。

そんな無用の長物となった各家庭のひな人形に、もう一度日の目を浴びさせようというのが千葉県勝浦市で開催されている『かつうらビッグひな祭り』である。25000体以上のひな人形を集めて市内各所に飾るというなんともスケールが大きなイベントだ。ここに集まったひな人形は、全国勝浦ネットワークの縁で徳島県勝浦町から譲り受けた7000体に加えて、各家庭から寄贈されたひな人形を飾っている。毎年全国から約600件届いているという。このビッグ雛祭りは、1989年に徳島の勝浦町で始まり、2001年に千葉県勝浦市で、2002年に長野県須坂市で催されるようになったイベントである。ひな人形たちは各家庭から、町おこしのイベントへと移動していたのだ。

東京でもひな人形を集めて飾っているところはないかと探したところ、意外と身近にあった。東京都三鷹市の三鷹駅前コミュニティ・センターである。1階のスペースに約100体のひな人形が飾られている(本記事頭の写真)。なかなかに迫力のあるひな人形だが、どういう経緯で飾られるようになったか、事務局長さんに聞いてみた。



事務局長の栗原さんによると、三鷹駅周辺住民協議会で提案され、2002年からコミュニティ・センターの有効利用やPRも兼ねて行っているという。市の広報でひな人形の寄贈を呼びかけたところ、予想以上の反響があった。現在はセンターの倉庫いっぱいに集まってしまい、新規の寄贈を停止している状態だという。また、以前は各ひな人形を個別に並べており手間がかかり、見栄えももう少しだったところ、住民協議会の委員に一級建築士の方がおり、大きなひな段を製作してもらったとのこと。反響も上々で、ケーブルテレビに取り上げられたり、筆者が取材した日も、多くの人がひな人形の前で写真を撮っていた。なお、寄贈された雛人形は保管し、毎年飾り、痛んできたら供養に出すとのことであった。

ちなみに、事務局長さんの言うところでは、このひな人形の展示着想を得たのは、ホークスサミットという「鷹」にまつわる地方自治体の交流によるのではないか、とのことだった。全国勝浦ネットワークといい、ホークスサミットといい、地方自治体の不思議な「名前」の繋がりもひな人形からみえてきた。

雛人形供養も人気で、宮城県の大本山成田山仙台分院には毎日のように雛人形が届くという。傾向としておもしろいのは、住宅事情を反映してか、お内裏さまとお雛さまは手元に残し、三人官女や五人囃子のみを供養に出すというケースも多いようだ。限られた住居スペースの都合で首を切られる三人官女や五人囃子の心中を察して余りあるところだ。あるいは、女の子が産まれて大きくなるまでの一時期だけ雛人形を飾るということもできる。ヤフーオークションには3000件以上の雛人形の出品があり、中古で購入するのは非常に容易であるし、使い終わったら再度出品ということも可能だ。

このように現在の日本の住宅事情から無用の長物となったしまっていたひな人形を、地域に寄贈して大規模な雛飾りを楽しんだり、お内裏さまとお雛さまだけを残して楽しんだり、あるいは中古での購入と売却を行って一時期だけ楽しんだりと現在にあわせたスタイルでひな祭りを楽しんでみてはどうだろうか。


参考
斎藤良輔「雛人形」Yahoo!百科事典
http://100.yahoo.co.jp/detail/雛人形/

「時代の変化? 雛人形「飾らない」約7割」ORICON STYLE、2008年2月17日
http://www.oricon.co.jp/news/ranking/52354/full/

「ひな人形:正しい片付け方と処分法」毎日.jp、2011年3月2日
http://mainichi.jp/life/today/news/20110302ddm013100166000c.html

かつうらビッグひな祭り
http://www.city.katsuura.chiba.jp/event/hinamatsuri.html

三鷹駅前コミュニティ・センター
http://www1.parkcity.ne.jp/ekimaecc/