2011年3月23日水曜日

セ・リーグはどこまで粘るのか?


東北地方太平洋沖地震の影響で東京電力管轄内の関東圏でも「計画停電」が実施されている。
それぞれの地域を数グループに分け、時間帯により最大3時間づつ送電を停止して大規模停電が起きない様に制御する。
実際には消費電力を見ながら「可能な限り停電は避ける方向」で送電を停止する為、計画停電区域内でも毎回停電する訳ではない。
「計画通りに停電させた方が良い」と言う人もいるが、極力停電させない方向で調整している電力会社の姿勢は評価して良いと思う。
確かに停電する地域や時間で「計画停電区域なのに停電した事がない地区」や日に2度も停電する地区が出たりしていて不公平に感じられるかもしれないが、停電時は交通機関にも影響が出るし病院なども対応が大変なので、何がなんでも予定どおりに停電させるのは良くないと思われる。
そして計画停電区域に入っているのに意外と停電しない背景には、やはり「節電」を意識してる人達や企業の努力がある。
営業時間の短縮や必要最低限の照明、暖房などの積み重ねにより停電を回避しているのである。

そんな時なのにセ・リーグは当初、予定通り3月25日の開幕を目論んだ。
パ・リーグや選手会と揉めたりしながらも強行する姿勢を曲げなかった。
しかし監督省庁となる文部科学省より要請があり、再度の会合の結果「3月29日に延期し、可能な限り節電してナイトゲームも開催する」と発表。
そして再び文部科学省より「ナイトゲームの見直し」を要請され、3月29日の開催も危うい様子だ。
文部科学省からの文を抜粋すると

1. 厳しい電力需給事情を踏まえ、計画停電が行われている東京電力・東北電力管内
  以外の地域で試合を開催するよう、可能な限りの努力をお願いします。
2. 特に、東京電力・東北電力管内の地域では、夜間に試合を開催することは厳に慎む
  ようお願いします。

「厳に慎むよう」と極めて強い口調であり、あくまでも「お願い」となっているが実質は監督省庁からの指導と受け取るべき内容である。
しかし、セ・リーグ側の対応は「4日間の延期」と「ナイトゲーム中も可能な限りの節電」であり、なんとも間の抜けた対応であった。
そして再び文部科学省より「再考して頂きたい」となる。
これは役所の文面なので響きは柔らかいが、実質は「駄目、やり直し」となり「節電したからと言ってナイトゲームを開催する事は認めない」と言う内容である。
再びセ・リーグ側は渋々と代替え案を模索し始めたようであるが、巨人の滝鼻卓雄オーナーは

「開幕はお上(政府)が決めることじゃない。節電に協力しろということでしょう」

と露骨に不快感を示したそうで、まだまだ揉めそうな雰囲気である。
これまでの経緯とセ・リーグ側の発言、とくに読売巨人軍の対応はJリーグなど他のスポーツが「自粛」するムードの中で異質なものであり、なぜそこまで粘るのか首を傾げざるをえない。

無論、プロ野球と言えども企業として「利益」を上げたい本音もあるだろう。
そうなると平日は昼間よりもナイターの方が集客も見込めるし、とにかく年間の試合数をこなしたい、それも出来れば自分のホームグラウンドも交えて行いたいのだろう。
球場で働いている人達の生活もあるし、全てを「自粛」の言葉で済ませる訳にもいかない。

しかし、ここで問題とされるのは野球活動に対する「自粛」では無く「節電」なのである。
計画停電により停電を強いられる人達が「ナイトゲームの照明」を見て納得出来るであろうか?
ここら辺の事は文部科学省も承知で「国民の理解を得にくい」とセ・リーグ側に再三に渡って説明(指導)をしているのだ。
それなのにセ・リーグ側は歯切れの悪い対応で、是が非でも予定通りのスケジュールでナイトゲームも含めて試合を開催したい姿勢を変えない。
代替え案として「電力に余裕のある地域(関東、東北以外)で試合をする」などが挙げられたが、一向に飲む様子はなさそうである。

野球の試合と言う観点だけで見れば「地方球場での試合」も良さそうであるが、ホームグラウンドを離れる球団の経営陣にとっては「営業的に美味しくない」と言う事なのだろうか?
無論、地方の球場も色々なイベントなどが入っているので早々にスケジュールを差し替えるのは簡単でないと思われるが、今の状況を考えれば年間の試合数を減らすなどの措置も許されるはずである。

そして電力問題も大事であるが、今の状況でプロ野球を関東地方で開催する事には色々な問題がある。
まず「交通機関に対する負荷」が挙げられる。
鉄道各社も節電の為に電車の本数を減らす「間引き運転」をしている状況で、何万人もが一カ所の球場に集まると言うのは大きな負担である。
平常運行の時でも週末のナイトゲーム時には球場周辺の駅は混み合うのに、今の電車の運行状況で大丈夫であろうか?
今でも時間帯によっては満員の電車なのに、さらに数万人の人間が乗れるとは思えない。
プロ野球の開催者側は交通機関の現状を理解しているか疑問である。

さらに今でも毎日の様に余震が続いている。
地震と言うのはいつ来るか分からない物ではあるが、あえて地震が頻発している時期に「一カ所に数万人を集結させる」のは非常にリスクが高い。
地震でなく試合開催中に「大規模停電」が発生しても大変だ。
数万人の帰宅難民者を抱えて球場側は対応出来るのだろうか?

確かに平常通りに「プロ野球の試合を見せる」と言う事に意義があるかもしれない。
加藤コミッショナーの言葉を借りると、

「世論の賛否両論は十分、理解している。私も多くの方から意見を頂いた。復興のメドがつくまでじっと待てばいいのか。国難の時こそ真剣勝負を見せるのが責務。野球を通して日本に、世界に元気を与えるのが(球界の)使命だ。」

筆者が思うに元気も大事だけど今は「電気」の方が大事なんじゃないかなと。
まず大規模停電による2時災害を回避し、徐々に国力を取り戻し復興に全力を尽くす。
節電に努めて、余裕があれば募金をして、無駄に食料品や日用品を買い溜めしない。
それが東京に住む人に出来る事じゃないかなと思います。